婚約破棄の慰謝料相場と7つの慰謝料増額理由

婚約破棄をされた場合、相手に慰謝料を請求できます。しかし、婚約破棄の慰謝料相場には幅があります。あなたが婚約破棄の慰謝料を請求する場合、どのぐらいの金額を請求するか悩まれるかもしれません。

 

結論から言えば、婚約破棄の慰謝料としては一般的には50万円~200万円程度が相場です。また、単に婚約破棄だけではなく、妊娠後に婚約破棄をされたため中絶せざるを得なくなった事情がある事案では婚約破棄の慰謝料として300万円が認められるケースも少なくありません。

また、慰謝料以外に、婚約に要した費用も損害賠償請求できる場合があります。この記事では婚約破棄の慰謝料相場や、できるだけ高額な慰謝料を獲得するための方法を解説します。なお、婚約破棄の慰謝料請求をする方法については下記記事を参考にしてください。
(参考)婚約破棄の慰謝料を請求する方法や成功させるためのコツを分かりやすく解説

 

(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

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婚約破棄の慰謝料相場とは?

婚約破棄の慰謝料=精神的苦痛の金額

婚約破棄の慰謝料は、法律上は、婚約破棄をされたことで被った精神的苦痛に対する損害賠償とされます。

しかし、受けた精神的苦痛は目に見えません。精神的苦痛の程度は人によっても様々であるため、婚約破棄の慰謝料相場が分からないという問題が生じるのです。

たとえば、どのような理由で婚約破棄をされたのか、どの時期(婚約が成立してすぐなのかや、挙式の直前等)に婚約が破棄されたのか等によっても、精神的苦痛の度合いは変わるため、婚約破棄の慰謝料相場は異なることになります。つまり、婚約破棄慰謝料の相場を一律に算定することは非常に困難であるといえます。

 

統計的な婚約破棄の慰謝料相場

しかし、明確な婚約破棄慰謝料の相場と言えないまでも、統計からある程度の範囲を割り出すことできます。ある統計によれば、慰謝料の支払いがあった中では50万円から200万円の間が、半分程度を占めていると言われます。

ごく少数の例外を除けば、50万円以下の事例や500万円を超える事例はほとんどありません。よって、婚約破棄慰謝料は50万円~200万円がおおよその相場と言って差し支えないと考えられます。

MEMO

相手が無職で一切お金がないような場合は、そもそも慰謝料の請求を断念することになります。
従って、上記はあくまで慰謝料の支払いがなされた事例(要するに、相手が慰謝料を一定程度払える場合)における慰謝料相場であることにはご注意ください。

 

裁判例でみる婚約破棄の慰謝料相場

婚約破棄の慰謝料について、いくつかの裁判例からどのような事例で高額な婚約破棄慰謝料が認められたかを分析します。

 

婚約破棄の慰謝料200万円が認められた裁判例

 

東京地裁平成24年7月26日判決:婚約破棄の慰謝料200万円

この事案では、女性(被告)が一方的に婚約破棄をして、男性(原告)から慰謝料を請求された事案です。

本件では、婚約破棄の原因は、婚約成立後も女性(被告)が婚約者である男性(被告)以外の男性と交際関係を続けていたこととされました。つまり、女性の浮気が原因で婚約破棄に至った事案であり、悪質性があるため高額な慰謝料が認められたと分析できます。

他方で、当事者は婚約までに約1年間交際しましたが、お互いに相手の年齢や将来の計画などを話し合うことなく結婚を決めていた背景がありました。この点は婚約の本気度合いが疑われる事情であり慰謝料の減額事由と考えられたのではないかと思われます。

 

東京地裁平成25年9月20日判決:婚約破棄の慰謝料200万円

この事案では女性(原告)と男性(被告)は、結婚を前提として17年間交際していました。しかし、男性(被告)が、婚約者以外の他の女性との入籍によって婚約を破棄した事案です。長期間に渡る交際関係があり、しかも他の女性と入籍して婚約破棄をした事案であり悪質性は高いと言えます。

また、男性(被告)は、女性(原告)に対して、他の女性と入籍した後も、肉体関係を持ち続けようと連絡し続けていました。要するに、女性(原告)に対して、不倫をしようと誘っていたのであり、その意味で悪質性の高さを裏付ける事情と言えるでしょう。

この事案婚約破棄の理由や婚約破棄後の事情には悪質性があると考えられます。しかし、それでも裁判所は慰謝料金額は200万円に留まっています。逆に言うと婚約破棄以外に他の慰謝料増額事由がないと、婚約破棄慰謝料は200万円を超えることは難しいと言えるかもしれません。

 

婚約破棄の慰謝料300万円が認められた裁判例

婚約破棄の慰謝料300万円が認められた事案では、婚約破棄に伴って妊娠・中絶があったという慰謝料増額事由が認められるものが多いです。妊娠発覚後の婚約破棄については慰謝料相場として300万円程度が認められてもおかしくないと言えるでしょう。

 

東京地裁平成22年3月30日判決:婚約破棄の慰謝料300万円

このケースの婚約破棄原因は、男性(被告)が女性(原告)の人格をないがしろにした悪質な行為を重ねたこととされました。女性(原告)は、30代後半のプライベートな時間のほとんどを男性(被告)のために費やし、結婚を期待させられました。結婚に向けた期待は年齢に応じて異なると考えられますが、30代後半における交際は結婚に向けた強い期待を抱かせる事情と言えると思われます。

また、本件では、男性(被告)は、女性(原告)の気持ちを考えない一方的な言動により裏切り、その結果として原告(女性)は中絶をさせられました。婚約関係があり妊娠したにも関わらず、中絶をさせられたことは婚約破棄の慰謝料300万円が認められるための慰謝料増額事由と言えるでしょう。

 

東京地裁平成21年3月25日判決:婚約破棄の慰謝料300万円

このケースで男性(被告)は、結婚に向けて妊娠と周りへの周知や手続きを行ったにも関わらず、曖昧な理由で婚約を破棄しました。

交際期間が8年にわたり、当事者が結婚を前提に同居していました。また、結納などの準備も進めていましたし、女性(原告)は、結婚と出産に向けて職場を休職し、その事実をまわりに伝えていました。交際期間が長期間であること、結婚を周知していたことは婚約の本気度合いが高いと言えます。そんな状況で一方的に婚約を破棄されたとなると、慰謝料を増額する事情と言えるでしょう。

また、妊娠後に婚約破棄をされたことで、女性(原告)は中絶せざるを得なくなりました。また、男性(被告)は婚約解消を申し出た後に態度をコロコロと変えており、原告(被告)はこれに振り回されました。このような事情を踏まえて、裁判所は婚約破棄の慰謝料として300万円を認めました。

この裁判例でも、300万円という高額な婚約破棄の慰謝料が認められたのは妊娠・中絶という慰謝料増額事由があったと考えられます。

 

MEMO

裁判例を分析すると、慰謝料が高額になるのは、①婚約破棄された側に落ち度がなく、②交際期間が長い、別の異性と交際するなど婚約破棄の実情が悪質で、③当事者の周りに結婚を周知したあとに婚約破棄がなされた場合といえます。

 

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婚約破棄慰謝料を増額する7つの理由

婚約破棄をされてしまった場合、できるだけ婚約破棄の慰謝料を増額するためにどのような事由を主張するべきでしょうか。ここでは婚約破棄の慰謝料相場を増額させる7つの理由について解説します。

 

慰謝料増額事由①:結婚準備の進行度

婚約から結婚までには段階的な準備が必要です。例えば、結納や両家の顔合わせ、結婚式場の予約、会社や友人知人への結婚の報告、新居の契約と引越しの準備などです。

これらの結婚準備が進行していればいるほど、婚約破棄が悪質であるため慰謝料の金額が高くなる傾向にあります。

慰謝料増額事由②:同棲の有無

婚約後に同棲をしているにも関わらず婚約破棄をしたことは慰謝料増額事由となります。

なぜなら、同棲は実質的に婚姻生活が始まっている状況ともいえるため、その時点で裏切るとなると婚約破棄の悪質性が高いと判断されるからです。

慰謝料増額事由③:既に妊娠している

女性が妊娠している状況において、男性から一方的に婚約を破棄されると悪質性が高いと判断されます。

そのため妊娠後の婚約破棄はとくに慰謝料の金額が高くなる傾向にあります。妊娠していれば中絶するにしても、シングルマザーとして育てるにしても女性の負担は高まってしまうことが理由です。

 

慰謝料増額事由④:婚約を機に退職している

結婚後に夫の仕事や生活を支えるつもりで職場を辞めたにもかかわらず、退職後に婚約破棄をされた場合は、慰謝料が高くなる傾向にあります。

この場合、会社へ結婚することを伝えたうえで退職しているため、会社の人からの目が気になってしまい精神的苦痛を強く感じてしまうおそれがあるからです。また、年齢やこれまでのキャリアによっては再就職へのハードルも高まるため、このタイミングでの婚約破棄は悪質性が高いと判断されます。

 

慰謝料増額事由⑤:浮気が原因で婚約を破棄した

婚約破棄の理由が一方の浮気である場合は、婚約破棄をした側に明確な婚約破棄原因があるため、慰謝料が高くなります。

 

慰謝料増額事由⑥:婚約成立後、長期間が経過している

婚約成立から長期間が経過しているということは、それだけ結婚に対する期待が高まっていることを示します。また、婚約期間中は他の異性と交際することはできず、プライベートの時間のほとんどを相手のために費やすのですから、長期間経過後の婚約破棄は悪質性が高いです。

 

慰謝料増額事由⑦:婚約破棄をされた側が結婚適齢期を過ぎてしまった

結婚には適齢期がありますし、とくに女性の場合は年齢によって出産までのタイムリミットがあります。さらに、婚約の事実を周知していた場合、周囲の人は婚約破棄についても知っているため、新たに交際相手を見つけることが困難となります。

そのため結婚適齢期を過ぎたあとの婚約破棄は、婚約破棄によるダメージが大きくなります。そのため慰謝料増額事由になると考えられます。

 

婚約破棄による慰謝料以外の損害賠償請求

婚約破棄をされた場合は慰謝料以外にもお金を請求することができます。婚約破棄を原因として、精神的苦痛(慰謝料)以外の損害が生じたときには、当該損害の賠償を請求できるのです。たとえば、婚約破棄をされたため無断な出費が生じた損害として結婚式費用などの損害賠償を請求できます。

 

おもに請求できる損害賠償は以下のようなものです。

  • 結婚式場のキャンセル費用
  • 新婚旅行のキャンセル費用
  • 婚約指輪の購入代金
  • 仲人への謝礼
  • 同居用に契約した家の初期費用
  • 同居のために購入した家具・衣類などの費用
  • 退職に伴う収入減少

 

注意

既に退職をしてしまった後に婚約破棄をされた場合は、退職に伴う収入減少をしっかり請求しましょう。退職に伴う収入減少は高額になる傾向があるので請求し忘れると損をしてしまいます。あなたの事案で具体的に請求できる損害項目を確認するためにも、婚約破棄に基づく慰謝料を請求する前に弁護士に法律相談することをおすすめします。

 

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婚約破棄の慰謝料相場を把握しよう!

 

婚約破棄をされた場合は婚約破棄に基づく慰謝料を請求することができます。婚約破棄慰謝料の相場は50~200万円程度です。しかし、妊娠後の婚約破棄の事案では慰謝料として300万円が認められることも少なくありません。

また、婚約破棄をされた場合は結婚式場のキャンセル代や退職に伴う収入減少分などの損害賠償を請求できることもあります。婚約破棄によるその他損害を含めると300~500万円程度の請求ができるケースが少なくありません。

婚約破棄の慰謝料相場を増額させる事由は事案に応じて様々です。本記事で挙げた以外にも、婚約破棄の慰謝料の増額できる場合もあります。婚約破棄慰謝料を請求する場合は慰謝料増額事由をきちんと主張立証して、適正な金額を獲得できるようにしましょう。

 

婚約破棄をされて慰謝料を請求したい場合は一度弁護士にご相談ください。当事務所では法律相談・見積りは無料で対応しております。また、当事務所で対応できる内容か否かについて電話でのご相談も行っております。まずは悩まず気軽にお問合せください。

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