共有財産と特有財産とは-財産分与の法律知識

財産分与は離婚のお金の問題で最も重要なものです。離婚事案のうち約14.6%では1000万円を超える財産分与が認められています。

(参考)財産分与とは

 

財産分与は夫婦の共有財産を対象とし、夫婦どちらかの特有財産は対象とならないとされています。財産分与の対象を理解するにあたって、共有財産とは何か、特有財産とは何かを解説します。

また、不動産があるときの財産分与で問題になる住宅ローンの頭金はどちらに含まれるのかや特有財産の証明方法なども紹介します。

 

(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

 

1.     離婚時の財産分与では共有財産と特有財産が重要

あなたが離婚したいと思ったら、子どもやお金の問題を考えなければなりません。

(参考)離婚時の3つの視点×8つのポイント

 

とくに、もしあなたが専業主婦でご主人との離婚を考えたとき、気になるのが「お金」の問題です。

子どもの親権を望んでいる場合は、今後の生活のためにお金が必要になるでしょう。

 

1.-(1)  財産分与の重要性と対象財産について

 

夫婦間の「財産分与」は、離婚協議や離婚調停でポイントとなる重要な項目です。

しかし、普段の生活で接することのない財産分与という法律用語について、正しい知識を持っている人は少ないのではないでしょうか。

 

そもそも、財産分与というのは、「婚姻中に夫婦の協力によって得た財産を個々に分配すること」を指します。

財産分与は、夫婦の共有財産を対象として、夫婦生活で築き上げた財産を折半するものです一般的には、経済的に弱い立場である一方が、経済的に強い立場である一方に対して、財産が2分の1ずつになるように請求します。

 

つまり、経済的に弱い立場であることの多い専業主婦にとっては、離婚後の生活を守るためにもとても重要な役割を果たすのが財産分与です。

なお、財産分与は親権や離婚原因とは直接関係はありません。扶養的財産分与や慰謝料的財産分与という考え方があるものの、不倫をした側であっても、親権を持っていなくても、財産分与を請求することはできます。

 

1.-(2)  財産分与を請求するときに夫婦で話し合うべきポイント

 

夫婦の共有財産をどのように分配するかは、基本的には夫婦間で話し合って決めることができます。

 

しかし、よほどの円満離婚ではない限り、財産分与についてはかなり揉めるケースが多いのも事実です。離婚協議、離婚調停・審判と財産分与を巡って争いが続くことも少なくありません。

 

財産分与について夫婦間で話し合うべきポイントはいくつかありますが、その中でも財産分与の対象となる財産(共有財産)とならない財産(特有財産)は問題になることが多いです。

 

2.     共有財産とは

2.-(1)  共有財産=財産分与の対象となる

 

共有財産とは、「婚姻期間中に夫婦で協力して築きあげた財産」のことです。

 

共有財産は名義が夫婦のどちらにあるかは関係ありません。仮に、夫名義の預金口座や不動産でも、夫婦生活で築いた財産と判断されれば共有財産になります。

 

共有財産と判断されれば、夫婦が持つ財産のなかでも財産分与の対象となります。

 

2.-(2)  専業主婦にも共有財産がある

 

結婚してから得た現金や預貯金に関しては、たとえ夫だけが稼いだものであっても共有財産の対象です。

なぜなら、あなたが専業主婦だとしても、あなたが専業主婦として家事を行い、子どもの面倒をみる等の協力をしたからご主人は現金や預貯金を貯めることができたと言えるからです。

 

2.-(3)  お金以外の共有財産

 

財産というと、お金そのものをイメージする人が多いかもしれません。しかし、お金以外の共有財産もあります。

 

例えば、土地や建物などの不動産、自動車、家財道具、電化製品などをはじめとして、有価証券や将来もらえる退職金、年金、各種保険金なども共有財産に含まれます。

 

土地や建物、自動車の名義が夫になっている場合でも、婚姻中に購入したものであれば名義に関係なく財産分与の対象となります。

 

2.-(4)  夫婦生活のための借金について

 

一方で、注意が必要なこともあります。それは、住宅ローンや借金といった「負債」も、共有財産として財産分与の対象となってしまう点です。

負債は金融機関から借りたものはもちろん、身内から借りたものでも対象に含まれます。

 

3.     特有財産とは

特有財産とは、夫婦の片方の財産として財産分与の対象とならないものをいいます。なお、特有財産は固有財産とも言われますが、特有財産が一般的な呼び方なので、以後は特有財産で統一します。

特有財産とは、結婚前に築いた財産や結婚中に相続によって得た財産です。また、別居後の財産も特有財産になります。

 

3.-(1)  特有財産①:結婚する前の財産

特有財産に含まれる代表的なものとして、独身時代に購入したマンションや自動車があります。また、嫁入り道具も特有財産として認められるものです。

独身時代の借金も個人の責任になるため、特有財産にはなりません。

 

なお、独身時代の預貯金が特有財産になるかは実務上難しい問題です。

預貯金は入出金によって変動が生じたり、共有財産と同じ口座で混在したりするからです。預貯金が特有財産か共有財産になるかが問題となるときは、離婚・財産分与に強い弁護士に相談して通帳の記載や取引履歴を検討する必要があります。

 

3.-(2)  特有財産②:結婚中に相続・贈与で得た財産

 

また、結婚後であっても、相続や贈与によって得た財産は特有財産になります。

 

例えば、結婚した後にご両親が亡くなり実家を相続したような場合があります。

そのため、たとえ夫が将来、両親からなんらかの財産を相続する予定がはっきりしている場合でも、それは特有財産であるため、財産分与の対象として主張することはできないのです。

 

また、配偶者へのプレゼントも贈与とみなされるため特有財産です。

なお、婚姻中に購入したものであっても、洋服やアクセサリーなどの個人の身の回りの物については、財産分与の対象にならないのが一般的です。

ただし、個人的に使用するものでも、高価な時計やアクセサリーは夫婦の協力で購入したとみなされ、共有財産になる可能性があります。

 

3.-(3)  特有財産③:別居後に得た財産について

 

別居後に得たものについても、財産分与の対象にはなりません。離婚をするときにどのタイミングで別居するかは重要な問題ですが、別居のタイミングは財産分与でも関係します。

 

別居後に離婚した場合は、別居時に存在した財産が財産分与の対象になります。他方で、別居後は夫婦は独立して生活していると考えられるため、別居後に取得した財産は財産分与の対象となりません。

 

なお、別居後に財産がなくなったときは、存在していない財産を分割できません。従って、実務上は、別居時の価値を基準として財産分与が行われます。

 

3.-(4)  法律による共有財産の推定と特有財産の証明

 

特有財産の対象となるかどうかで財産分与の内容が変わってきますから、自分に特有財産がある場合はぜひとも主張したいですよね。

ただ、なかには共有財産となるか、特有財産となるかがグレーなものもあります。

 

そうした場合には、特有財産であることを証明する必要があります。法律で夫婦のどちらに属するか不明な場合は共有財産と推定されるからです(民法762条2項)。

 

例えば、独身時代に購入したマンションであれば不動産登記があるため特有財産と証明することは簡単です。

しかし、特有財産と証明することが難しいケースも少なくありません。夫婦の共有財産と特有財産かが争われた時は、特有財産であるとを納得させられる説明や証拠の提示が必要になるので注意が必要です。

 

4.     不動産の財産分与―住宅ローンや頭金は特有財産or共有財産?

不動産の財産分与で対象が問題になるのは住宅ローンや頭金の取扱いについてです。

 

住宅のように大きな買い物をする場合は、一方が独身時代に貯めた貯金を住宅ローンの頭金にすることも珍しくありません。また、夫婦のどちらかの両親が頭金を援助する事例もあります。

 

4.-(1)  頭金に特有財産が含まれている事例

 

不動産の購入資金に特有財産が含まれていると判断されれば、特有財産部分は財産分与の対象となりません。

頭金として特有財産が含まれるか否かは、お金の流れを丁寧に追って、特有財産が含まれると主張する側が証明する必要があります。

このような事例では、離婚・財産分与に強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

4.-(2)  住宅ローンが残っている場合の財産分与

 

また、住宅ローンが残っている場合も問題となります。

妻が専業主婦で夫がサラリーマンの夫婦が住宅ローンを組んで不動産を購入したときは、金融機関はサラリーマンである夫にお金を貸しつけます。従って、不動産と住宅ローンの名義はご主人になっている事例が多いかと思います。

さらに、別居後に夫が支払った住宅ローンの金額がどうなるか、財産分与をした後にマンションに夫婦のどちらが住むか等の問題があります。

 

例えば、結婚当初にマンションを購入した場合、現在のマンションの価値は購入当初よりも下がっているのが一般的です。

そのため、現在の住宅の評価額などを考慮したうえで、住宅ローンの残額を控除して財産分与を計算することになります。

これは比較的簡単な事例ですが、住宅ローンを組んで購入した不動産が共有財産であるときは財産分与は権利関係が複雑になるため離婚・財産分与に強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

4.-(3)  借金も共有財産だがオーバーローンによる負の財産分与は行われない

 

さらに、住宅の財産分与で気になるのが、多額の住宅ローンの残高がある場合です。一般的には夫婦生活のための債務も共有財産と考えられています。

しかし、注意しなければならないのが、物件の価値よりも住宅ローンの残高のほうが大きい「オーバーローン」と呼ばれる状態にある住宅です。

 

オーバーローンの不動産は財産分与の対象でないとされています。

また、オーバーローンのように債務超過であるときは、住宅ローンの名義でない妻に債務を負わせるのかが問題になります。この点に関しては、実務上は債務分担を命じるような「負の財産分与」は行われていません。

 

5.     財産分与の対象である共有財産と対象でない特有財産をチェックする

 

財産分与では、共有財産と特有財産とは何かを理解することが大切です。

 

共有財産は夫婦で築いた財産として財産分与の対象となります。一方で、共有か明らかでない財産は法律上共有財産と推定されるため、特有財産と主張するのであれば証明する必要があります。

 

共有財産には住宅ローンなどの債務も含まれます。

しかし、住宅ローンを組んでマンションを購入したようなときは、頭金の取扱いや財産分与後にどちらがマンションに住むか等の様々な問題が生じます。

 

もし共有財産と特有財産の区別がどうなるか、財産分与をどうするべきかが夫婦間の話し合いで解決できないときは、離婚・財産分与に強い弁護士に相談しましょう。

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