離婚を考えているものの、初めてのことで離婚の手順がわからずためらっている人も多いでしょう。
この記事ではそのような人のために離婚の手順や上手な進め方などについて解説していきます。
Contents
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

1. 離婚手順①:離婚の準備について
離婚したいと考えるようになったら、まずは離婚の準備をする必要があります。最初の離婚手順は離婚の準備です。
1.-(1) 3つの視点×8つのポイントで離婚問題を整理する
離婚するときは何が問題になるか分からない…
離婚の手順を考えたときに、離婚の進め方について様々な情報があるため混乱されるかもしれません。
離婚準備では最初に離婚で問題になる点を3つの視点×8つのポイントで整理することをおすすめします。
3つの視点とは、離婚できるか、離婚と子どもの問題、離婚とお金の問題です。8つのポイントとは、離婚できるかについて離婚の理由、離婚と子どもの問題について親権者・養育費・面会交流、離婚とお金の問題について慰謝料・財産分与・婚姻費用・年金分割です。
離婚をかんがえたときの3つの視点×8つのポイントについて詳しくは下記の記事で解説していますので参考にしてください。
(参考)【永久保存版】離婚したいなら知るべき離婚・財産分与の全知識29項目
1.-(2) 離婚後の生活について準備をする
あなたが専業主婦で、夫がサラリーマンのような場合は、離婚をした後の生活について離婚準備時点でよく考えておく必要があります。
まず離婚をした後の生活に向けてお金を用意する必要があります。
離婚時点で財産分与や慰謝料を貰えても、預金を切り崩しながら生活をするのは精神的にプレッシャーがあるでしょう。従って、離婚を機会に仕事を探す方も少なくありません。
また、離婚後はどこに住むかを考える必要があります。新しい賃貸物件を探すのか実家に戻るのかを予め考えておく方が良いでしょう。
離婚をしたときに持ち家がある場合については、持ち家に住むか否かによって離婚の負担は大きく異なります。
(参考)離婚時に持ち家があるときのポイント ケース別で分かりやすく解説
1.-(3) 別居する前にできる離婚準備
離婚の手順として、いつ別居をするかは非常に大きな問題です。
別居は財産分与の基準時点や婚姻費用を請求できる時点であり、また、婚姻関係破たんのメルクマールとされています。
また、別居をすると相手方配偶者の動向が分からなくなります。もし離婚にあたって財産分与や慰謝料で揉めそうなときは、別居する前にきちんと証拠収集する必要があります。
離婚の手順において別居は非常に重要です。
別居をすると婚姻生活は大きく変化するため、別居をする場合は予め離婚・財産分与に強い弁護士に相談することをおすすめします。
2. 離婚手順②:離婚の方法について知る
まずは、離婚の方法について把握しておきましょう。離婚の種類は、大きく分けて4つあります。離婚の方法としては、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の方法が考えられます。
まずは当事者同士の話し合いによって離婚を試み、無理な場合は家庭裁判所において離婚の可否を判断して貰います。
2.-(1) 協議離婚とは―話し合いによる離婚の手順
協議離婚とは夫婦の話し合いで離婚をする方法です。
日本で離婚している人のほとんどがこの協議離婚をしているといわれています。
夫婦で離婚に関する条件や子どもがいる場合には親権、養育費などについて話し合いをおこなって離婚をすることになります。感情的になってしまって冷静に話し合えない場合には、弁護士などに間に入ってもらうことも可能です。
夫婦同士の話し合いによって離婚をすることにお互いが合意すれば、離婚届を提出するだけで離婚することができます。
協議離婚をする場合には、単に離婚の合意が成立したことで安心するのではなく、以下の事項についてしっかり話し合うことが必要です。
- 離婚をお互い合意しているか
- 親権者を誰にするか
- 養育費はどれぐらい支払うか
- 面会交流はどのように行うか
- (不倫=不貞行為)で離婚した場合の慰謝料について
- 財産分与をどのように行うか
- 離婚までの婚姻費用の分担について
- 年金分割の手続について
なお、子どもが未成年の場合は離婚届に親権者を記載する必要があるため、親権者を決定しないと離婚することが出来ません。
協議離婚をする場合には公正証書を作成することが望ましいです。
とくに養育費等の支払いについては将来に行われるものなので、離婚後に支払われないリスクを想定してしっかりとした書面を作成する必要があります。
なお、離婚したいと急ぐあまり、財産分与や慰謝料について話し合いをせずに離婚するケースもあるかと思います。
おすすめの離婚の手順としては、きちんと別居のタイミングを見計らい、離婚条件を固めた上で離婚することです。
しかし、離婚したいために急いで別居をし、離婚届を出したケースもあるでしょう。おすすめの離婚手順からは前後しますが、離婚後も財産分与や慰謝料は請求できますのでチェックしておきましょう。
(参考)離婚後も財産分与を請求できる場合と注意点【弁護士が解説】
2.-(2) 調停離婚とは―裁判所で合意を目指す離婚の手順
協議離婚が上手く行かなったときの離婚手順として調停離婚があります。
調停離婚とは家庭裁判所で調停委員を介しておこなう離婚方法になります。
協議離婚でうまく折り合いがつかなかった場合に調停離婚に持ち込まれるケースが多いでしょう。
離婚の手順として調停を行う必要があるときは家庭裁判所に申立てを行います。
離婚調停は男女各1名の調停委員と裁判官が夫婦の双方から話を聞いて離婚の可否や慰謝料・財産分与等の離婚条件について意見調整を行います。
調停期日は、月1回程度のペースで行われ、期日に夫と妻のそれぞれから交代で調停委員が話を聞いて行われます(夫と妻が直接顔を合わせないように別々の部屋に待機し、話し合いも交代で行われます。)。場合によっては、書面による主張や証拠の提出が求められる場合もあります。
調停離婚のために必要な期間は3か月から半年程度が一応の目安となりますが、長引く場合は1年以上に渡る場合もあります。
調停による離婚においては、当事者が合意した場合のみ調停が成立し、調停調書が作成されます。
話し合う場所が家庭内から裁判所に移っただけであり、あくまでも合意による解決を目指すのが調停離婚と言えます。
調停委員が意見調整を行ってくれますが、あくまで中立的な立場であるため誰かの味方になってくれません。上手く自分の意見を主張できないと不利な条件で調停が成立してしまうことがあります。
また、調停が成立してしまうと、後になって内容の変更を求めることは出来ません。合意する前に有利な結論を得るために最大限の主張・立証を行う必要があります。
また、相手方に弁護士がついている場合、どうしても調停委員は弁護士の意見に耳を傾けてしまう傾向にあります。従って、このような場合には調停段階から弁護士に依頼することが望ましいと言えます。
2.-(3) 審判離婚とは―裁判所の判断による離婚の手順
調停不成立のときの離婚の手順として審判離婚があります。
審判離婚とは、調停離婚が成立しなかったときに適用されるもので、条件面で調停不成立であるものの離婚が相当であると裁判所が判断した場合にのみ離婚の審判が下されます。
家庭裁判所は調停が成立しない場合でも相当と認めるときは、職権で当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、離婚のために必要な審判をすることができるとされています(審判離婚、家事審判法24条)。
しかし、実務的な離婚の手順として審判離婚はほとんど利用されていません。
これは、調停不成立の場合には、夫婦のどちらかが離婚を拒否しているため「当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度」で審判ができるケースが稀だからだと考えられます。
法律上も審判離婚は異議申し立てすることで無効にすることが可能なため、利用されにくいのも理由でしょう。
従って、実務的には離婚調停不成立の場合の手順としては裁判離婚に移行するのが一般的です。
2.-(4) 裁判離婚-判決による離婚の手順
ここまでの離婚方法で離婚できなかったときは裁判離婚が最後の離婚手順となります。
裁判離婚とは、調停離婚が成立しなかった場合に、家庭裁判所に訴訟を起こす離婚手順です。なお、裁判離婚は調停手続後でないと行えません(調停前置主義)。
裁判離婚の場合には判決か和解で終了します。
裁判離婚における審理手順は、まず民法が定める離婚事由(民法770条)があるか否かという観点から審理を行い、離婚事由が存在すると判断されると財産分与や慰謝料を決めることになります。
離婚手順としての裁判離婚の特徴は相手方配偶者が離婚に合意していなくても離婚することがです。
従って、離婚理由があるか否かが決定的に重要です。離婚理由について詳しくは下記記事を参考にしてください。
(参考)離婚理由について
裁判離婚の流れは、裁判所に訴訟を提起した後に、裁判期日において当事者双方が主に書面の形で主張を行い、その根拠となる証拠を提出します。
主張・立証がある程度まで進むと、当事者に対する尋問がなされます。また、適宜のタイミングで裁判所側から和解を進められることもあります。
和解が成立せず、お互いの主張・立証が終了すると、裁判所が離婚できるか否かや財産分与・慰謝料の額等を判断します。
もし不満がある場合には判決書を受け取ってから2週間以内に控訴することができます。
裁判離婚のために必要な期間は約1年間程度が目安となりますが、控訴・上告等が行われた場合には数年単位必要な場合もあります。
裁判期日においては、裁判官は当事者が自発的に行った主張・立証のみに基づいて判断を行います。
調停に比べて裁判官はさらに一歩引いた中立的な立場であり、自分できちんと主張・立証を行わないと不利な判決がなされてしまいます。
また、裁判手続には厳格な方式や手続が定められており、正確な法律知識がないと、思わぬ一言で大失敗してしまう危険があります。
離婚調停と異なり、裁判離婚は自分でやるのは非常に困難です。裁判をしなければならないまで離婚問題がこじれたときは、離婚・財産分与に強い弁護士に依頼することを強くおすすめします。
3. 離婚手順③:離婚の必要書類を準備する
3.-(1) 離婚届の作成
離婚をするのなら、しっかりと離婚の手順を把握しておくといいでしょう。法律によってきちんと方法が定められているため、間違ってしまうと離婚が認められない可能性もあるので注意が必要です。
まず、協議離婚が決まったら離婚届を準備します。離婚届は各市区町村の役場の窓口に行けば無料でもらうことができます。
離婚届をもらってきたら必要事項を正確に記入しましょう。
氏名や住所だけでなく、本籍や同居の期間、離婚の種類、20歳以上の証人2人の署名捺印などが必要になります。
未成年の子どもがいる場合には、親権をどちらが持つのか決めてから子どもの名前を記入します。
離婚時に親権者が決まっていない場合には、離婚は認められませんのでしっかりと話し合って決めることが重要です。
離婚と別居のタイミングが違う場合もあるでしょう。その場合は別居した日時の記入も必要です。
また、別居する前の住所の記載も必要なので、すでに別居していた場合には夫婦で同居していた住所を記載することになります。別居していない場合には空欄で大丈夫です。
あなたが離婚したい側であれば、離婚届は速やかに作成をしてすぐ提出することをおすすめします。
離婚届を出すのが遅れてしまい、相手方配偶者の気持ちが変わると離婚届不受理の申出がされるおそれがあります。離婚届は作成したから安心ではなく、きちんと提出するところまでが離婚手順となるので注意しましょう。
3.-(2) その他の必要書類を集める
離婚届以外では離婚時には戸籍謄本が必要書類となります。本籍地以外で離婚届を提出する場合に必要ですが、本籍地で提出する際には必要ありません。
また、離婚届を提出するときには、身分確認できる書類(パスポートや運転免許証)などを持参しましょう。
代理人に提出してもらったり郵送したりもできますが、間違いがあった場合に備えて夫婦のどちらか一方が提出したほうが無難です。
4. 協議離婚を成功させるための手順と進め方
離婚の方法は4つの種類があることを説明しましたが、できるだけスムーズな離婚を目指しているのなら協議離婚をすると良いでしょう。
調停離婚や裁判離婚は裁判所の手続なので弁護士に依頼することが多いです。しかし、協議離婚は自分で進めるため手順や進め方を不安に思われるかもしれません。
そこで、最後に協議離婚を成功させるための手順と進め方を解説します。
4.-(1) 協議離婚がおすすめの理由
夫婦の話し合いで離婚できれば、裁判費用や弁護士費用がかかりませんし、調停や裁判に比べて時間もかかりません。
調停委員や家庭裁判所などを介さないため、夫婦間で合意することができ、離婚届の記入に間違いがなければすぐに離婚することができるのです。
また、協議離婚では離婚理由が問われることがないのもポイントでしょう。裁判離婚では、法的に認められる証拠がなければ離婚することが難しいのですが、協議離婚ではそのようなことがありません。
4.-(2) 協議離婚の手順:離婚を切り出す前に証拠収集をする
協議離婚を有利に進めるためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
まずは証拠集めです。離婚の手順としては協議離婚を切り出す前に証拠を集める必要があります。
協議離婚では夫婦間の話し合いが重要になりますが、性格の不一致などでは離婚に合意してもらえない可能性もあります。
このときに離婚理由があることを示す証拠があれば、相手方配偶者が離婚を拒否することが難しくなります。
また、離婚の話し合いをする前に証拠を集めるのがおすすめの手順です。
離婚を切り出してしまうと相手方配偶者が有利に離婚をすすめるために証拠を隠す場合もあります。離婚を切り出された相手方配偶者は、円満な離婚協議を行うフリをしながら、証拠や財産を隠すことがあるのです。
4.-(2) 協議離婚の手順:離婚をかんがえたときに集めるべき証拠
離婚を切り出す前に集めるべき証拠としては、離婚理由を示すものや財産状況を示すものがあります。
例えば、相手方配偶者の不倫(不貞行為)が原因で離婚したいと考えているのなら、配偶者が不倫をしている決定的な証拠があれば話し合いが有利になります。
主たる離婚理由が不倫だとしても、日常的にDVやモラハラがあれば軽微なものでも証拠化しておくことをおすすめします。
DVやモラハラの被害状況について、日記で記録を残す、配偶者とのやりとりを録音する、怪我の診断書を貰う、精神科などへの通院履歴や診断書を貰うことが考えられます。
4.-(3) 協議離婚の手順:財産状況の調査
また、離婚とお金の問題のうち財産分与や養育費については、相手方配偶者の保有資産や収入状況を把握する必要があります。
例えば、相手方配偶者の給与明細や確定申告書を保管しておく、預貯金残高や保有不動産を調べておくことが考えられます。
不透明なお金の流れがあるものの、預貯金については口座情報が分からないため財産分与を請求できないことがあります。
ごみ箱に捨てられている出金伝票を保管しておいたり、銀行やクレジットカード会社から届く封筒を見て取引がある金融機関やクレジットカード会社等をチェックすることが考えられます。
4.-(4) 協議離婚の手順:相手方配偶者との話し合い
離婚の手順としては証拠を十分に集まったら、いよいよ離婚について話し合いをすることになります。
協議離婚の話し合いでは冷静になることを心がけましょう。ついつい感情的になってしまうことも多いでしょうが、できるだけ冷静に条件を詰めていくことがポイントです。
また言った言わないの争いになることを防ぐために、離婚で協議がまとまった点は紙にまとめながら話し合いを進めるのも効果的です。
親権や養育費、財産分与など決めなければいけないことは多くあります。3つの視点×8つのポイントに沿って、離婚条件で決めてない点がないか確認しましょう。
4.-(5) 協議離婚の手順:離婚協議書の作成と公正証書にしたときの費用
離婚条件が決まったら次の手順は離婚協議書の作成です。費用はかかりますが、できれば公正証書にした方が良いでしょう。
仮に離婚協議書に定めた養育費の支払いがストップしたとしても、公正証書にしておけば強制執行ができます。公正証書の費用は離婚協議書に定める内容に応じますが、数万円から10数万円程度の費用はかかります。
4.-(6) 弁護士のサポートを受けて離婚協議を進める方法と弁護士費用
離婚協議は夫婦の話し合いですが、法律知識がないと思わない損をしてしまう可能性があります。
夫がある程度稼ぎがあったり、夫婦の共有財産があるときは弁護士のサポートを受けた方が安心です。
離婚協議から弁護士のサポートを受けるときは2つの方法があり、それぞれ弁護士費用が異なります。
1つ目は離婚協議を弁護士に任せて進める方法です。この場合は弁護士費用として数十万円程度がかかります。
2つ目は離婚協議自体は自分で行うものの継続的に弁護士に相談してサポートを受けながら進める方法です。こちらであれば毎月2~5万円程度の相談費用を支払えばよく、離婚の話し合いが長引かない限りは費用は安く抑えられるでしょう。
5. 離婚の手順と進め方を考えておく
離婚を考えたときは離婚の手順や進め方を考えることが重要です。
例えば、離婚の手順を間違えて、証拠を集める前に感情的になって離婚の話を切り出すと証拠や財産を隠されて損をするリスクがあります。
離婚の手順としては、まず離婚準備段階では離婚条件で決める点をしっかり検討しましょう。
次に、離婚の手順について、どう進めるのが上手いやり方かを考えておきましょう。とくに別居をするタイミングは重要なので注意が必要です。
離婚の方法は様々ですが、家庭裁判所で行う調停離婚や裁判離婚になれば離婚・財産分与に強い弁護士に依頼することをおすすめします。
従って、この記事では協議離婚を想定して、協議離婚の手順と上手い進め方を詳しく説明しました。
夫婦間の話し合いで解決できる協議離婚は、もっとも簡単な離婚方法です。証拠を集めたり離婚条件を考えたりしておくことで、話し合いもスムーズに進みます。
万全の準備を整えて離婚の話し合いに臨むことが重要ですから、離婚の手順を知って準備するようにしましょう。