財産分与の種類

財産分与は離婚とお金の問題の中でも最も大きな金額が動く問題です。

 

離婚事案の約14.6%では1000万円超の財産分与請求が認められており、財産分与について法律知識がないと大きな損をしかねません。

(参考)財産分与について

 

この記事では財産分与はどのような性質があるのか、財産分与の種類に応じて解説します。

結論から言うと財産分与の種類は4つあると言われています。もっとも、財産分与の種類を知らなくても問題がないケースも多いです。

そのため、離婚・財産分与を弁護士に相談する前に、法律的に難しい知識も知っておきたいという方だけがこの記事をお読みください。

 

1.     財産分与の種類とは

 

財産分与とは夫婦の共有財産を離婚時に折半するものです。しかし、財産分与がどのような目的で行われるのか、どのような考え方で共有財産を清算するかは様々な考え方があります。

 

財産分与の種類とは、財産分与をどのような考え方で行うべきかのヒントを与えてくれる理論的な分類です。

財産分与には以下の4つの種類があると言われています。

  • 清算財産分与
  • 扶養的財産分与
  • 慰謝料的財産分与
  • 婚姻費用・養育費の清算としての財産分与

 

もっとも財産分与の種類は法律的・理論的な考え方に関するものです。

実務的には、「財産分与にどんな種類があるのか?」を考えるよりも、それぞれの論点について、財産分与の対象はどのように決めるべきか、財産分与の割合はどの程度にするべきか、どの程度の財産分与請求を認めるべきかを考える方が有効です。

 

もっとも、財産分与の種類という法律的な考えに興味がある方もおられるかもしれません。そこで、以下では4つの財産分与の種類を解説し、実務的にどのような意味を持つのかを解説します。

 

2.     財産分与の種類①:清算的財産分与

2.-(1)  清算的財産分与とは

 

財産分与の種類の1つ目は清算的財産分与です。

清算的財産分与とは、夫婦が結婚期間中に協力して形成した財産は、財産名義を問わずに(例えば、夫の単独名義だとしても。)、夫婦の共有財産であると考えて、離婚時に公平に分配するものです。

 

共有財産を分配するものですので、離婚原因は問われません。従って、清算的財産分与は、有責配偶者(例えば、浮気をした妻等)からも請求できます。

 

清算的財産分与では、夫婦の共有財産(お金=現金、預金、不動産、保険の解約返戻金等)を原則として2分の1ずつに分配します。

離婚問題で財産分与と言うと一般的にイメージされる財産分与の種類が清算的財産分与です。

 

2.-(2)  清算的財産分与の実務的対応

 

財産分与の種類のうち清算的財産分与については、夫婦の共有財産を確定した上で財産分与の割合を決めて分配するというのが実務的な対応です。

 

財産分与について離婚調停等でトラブルになりそうな点は、それぞれ別途記事を設けて解説しておりますので参考にしてください。

(参考)財産分与の対象になる共有財産とは

 

(参考)財産分与の割合について

 

(参考)離婚時に持ち家があるときは財産分与請求をして持ち家に住み続けることができるか?

 

3.     財産分与の種類②:扶養的財産分与

3.-(1)  扶養的財産分与とは

 

財産分与の種類の2つ目は扶養的財産分与です。

扶養的財産分与とは、夫婦の一方の離婚後の生活のために行われる財産分与です。

 

過去においては結婚後は夫婦の一方(妻)が家事や子育てに専念するために仕事を辞めることが一般的でした。

このようなときは妻は離婚後に就職先を見つけることができず、親族に頼るか生活保護等を受けざるを得ないことが少なくありません。

とくに共有財産がなくて財産分与請求ができないときは、夫婦の一方だけが離婚によって生活に困窮することがありました。

 

そこで、共有財産がないため清算的財産分与ができなくても、サラリーマンで仕事をいている夫に対し、専業主婦の妻が離婚後に経済的自立するまでの生活費を負担させるために扶養的財産分与の考え方が登場したのです。

離婚後の生活は夫婦がそれぞれ考えるものであり、扶養的財産分与は財産分与の種類のうちでも救済的性格が強いと言えるでしょう。

 

3.-(2)  扶養的財産分与の実務対応

 

まず財産分与の種類でも救済的性格の強い扶養的財産分与が認められるのは、実務的には例外的なケースです。

離婚した夫婦の一方が、まとまった特有財産を有している等の明らかな経済的格差がある場合に扶養的財産分与は認められます。

また、清算的財産分与や慰謝料によって、離婚後の生活が確保できる見込みがあるときも扶養的財産分与は実務的には認められにくくなります。

 

扶養的財産分与が認められるときの計算方法は、婚姻費用をベースとして離婚後1~3年程度が認められることが多いようです。

なお、最大では離婚後5年程度の婚姻費用が扶養的財産分与として認められます。

 

扶養的財産分与は、分与義務者に特有財産があるため可能なときは一括払いにより、そうでないときは毎月一定額を支払う方法により支払いがなされます。

 

4.     財産分与の種類③:慰謝料的財産分与

4.-(1)  慰謝料的財産分与とは

 

財産分与の種類の3つ目は慰謝料的財産分与です。

慰謝料的財産分与とは、財産分与において慰謝料的要素が考慮されることをいいます。

財産分与は夫婦の共有財産を分配するものであり、慰謝料は離婚の原因を作った配偶者が片方の配偶者の精神的苦痛の償いをするものであり、性質が異なるものです。

 

しかし、慰謝料と財産分与は、ともに金銭的請求を内容とするため、明確に区別されずに慰謝料・財産分与の双方を合計した金銭的請求がなされることがあります。

財産分与の種類というより離婚時にお金の問題を解決するための便宜的処理と言えるかもしれません。

 

4.-(2)  慰謝料的財産分与の実務的対応

 

慰謝料的財産分与が問題になるのは、法律上、家庭裁判所が「一切の事情を考慮して」財産分与の額を決定できるからです(民法768条3項)。

例えば、離婚の原因について夫婦の片方に帰責性があるときは、離婚に至った事情も「一切の事情」として財産分与時に考慮できます。

 

しかし、慰謝料と財産分与は元々性質が異なります。

従って、家庭裁判所においても、慰謝料も含めて財産分与の請求をする旨が明示されない限りは財産分与において慰謝料は考慮されないのが実務的な取扱いです。

 

なお、離婚に伴う慰謝料については詳しくは下記記事を参考にしてください。

(参考)離婚慰謝料の請求方法や慰謝料相場

 

5.     財産分与の種類④:婚姻費用・養育費の清算としての財産分与

 

5.-(1)  婚姻費用・養育費の清算としての財産分与とは

 

財産分与の種類の4つ目は婚姻費用・養育費の清算としての財産分与です。

婚姻費用・養育費の清算としての財産分与とは、財産分与の算定において未払婚姻費用や養育費を考慮するという考え方です。

 

財産分与の種類として理論上は考えられる点ですが、婚姻費用や養育費はそれぞれ財産分与とは別に調停・審判等で確定するべき問題です。

しかし、実務上、婚姻費用や養育費は家庭裁判所に申立てをした時点から認められます。

従って、過去の婚姻費用や養育費を財産分与において考慮することは一定の意味があります。

 

5.-(2)  婚姻費用・養育費の清算としての財産分与

 

実務的には財産分与において未払婚姻費用を算定し、支払義務者の資力を考慮して全額又は一定額を加算する方法が取られます。

婚姻費用の清算としての財産分与はやや不明確な処理ですが、財産分与の種類として考えた場合、婚姻費用は別途解決するべき問題だからとも言えます。

 

他方で、過去の養育費については実務上は財産分与で考慮することはされません。

財産分与の種類として理論上考えられるものの、実務では正面から認められるわけではないと言えます。

 

6.     財産分与の種類を整理する

財産分与の種類は4種類が考えられますが、一般的に財産分与としてイメージされるのは清算的財産分与です。

 

財産分与の種類のうち慰謝料的財産分与や婚姻費用・養育費の清算としての財産分与は、本来は財産分与とは別途請求するべき問題です。

従って、財産分与の問題というより、それぞれ慰謝料請求や婚姻費用・養育費の請求を行うことが望ましいと言えます。

 

他方で、扶養的財産分与は清算的財産分与があまりないときに離婚後の生活の救済手段としての性格を持つ財産分与の種類です。

逆に言うと、まずは清算的財産分与をしっかり請求できないかを考えることが先決問題です。

 

以上の通り、財産分与の種類は4種類がありますが、一番のポイントは清算的財産分与を請求できるかです。

その他の財産分与の種類は本来的には財産分与で解決する問題ではないと言えるからです。

 

清算的財産分与を請求できるかについては、それぞれ別途記事を参考にしてください。

財産分与は離婚とお金の問題でも高額なものです。法律知識がないため損をしたくないのであれば、離婚・財産分与に強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

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