離婚後も財産分与を請求できる場合と注意点【弁護士が解説】

離婚後に財産分与の請求ができる期間が、限られているのを知らない人は多いかもしれません。

結論から言うと離婚後も2年間は財産分与を請求できます。また、離婚時に財産を隠されていたような場合は離婚後2年が経過していても損害賠償請求ができる可能性があります。

 

離婚したいと急ぐあまり、子どもの親権や養育費だけ取り決めて離婚する方も少なくありません。

しかし、離婚をした後も財産分与を請求することができます。この記事では離婚後に財産分与を請求するときの注意点を紹介します。

(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

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1.     離婚後に財産分与を請求する場合の時効について

離婚する際に財産分与を求められることを知っている人は多いと思いますが、財産分与に時効があることを知っている人は少ないのではないでしょうか。

 

1.-(1)  離婚後2年間が財産分与請求の期限

 

実は、離婚後も財産分与を請求することができます。しかし、財産分与の時効は離婚から2年と決まっています。

 

この財産分与の時効は除斥期間と言われており、定められた期間が経過すると請求できる一切の権利を失います。

つまり、離婚から2年を過ぎてしまうと、財産分与を請求できる権利がなくなってしまうので注意してください。

 

1.-(2)  離婚後に財産分与の請求期限を過ぎたら何も貰えない?

 

離婚後に財産分与を請求するケースとして、離婚時に財産分与を受け取れると知らなかった場合があります。

例えば、離婚時に財産状況を聞いたところ嘘の回答をされていたため、離婚後2年以内に財産分与を請求できなかったとしたら何も貰えないのは問題だと思われるかもしれません。

 

この点に関しては、離婚時に財産を隠されたため、離婚後2年間が経過したときは損害賠償請求ができる可能性があります。

例えば、浦和地裁川越支部平成元年9月13日判決は、離婚時に財産分与の協議対象とするべきだった夫婦の共有財産を隠していたために財産分与請求権を行使する機会を失ったことを理由に損害賠償請求を認めています。

裁判所は、財産分与は時効により請求できないが、損害賠償請求ならできると理屈をつけて救済してくれる場合があるのです。

 

また、離婚後2年が経過していても慰謝料請求ができる場合はあります。例えば、離婚の原因が相手の不倫にある場合は不倫慰謝料を請求できます。この場合は財産分与と時効の考え方が違うのです。
(参考)離婚後も慰謝料は請求できる? 請求方法や手続きの流れを徹底解説!

 

1.-(3)  離婚調停で財産分与を約束したのに支払われないとき

 

また、離婚調停で財産分与の約束をしていたのに、離婚からしばらく経った後も財産分与が行われない場合があります。

 

例えば、不動産の財産分与に関しては、離婚が成立しないと財産分与を原因として登記ができません。

このような場合は財産分与の請求ではなく、通常の請求権として時効を考えることになります。例えば、家庭裁判所の離婚調停で財産分与が認められたときは原則として10年間が時効期限となります。

 

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2.     離婚後に財産分与で請求できる対象や割合は?

 

2.-(1)  結婚期間中の共有財産が対象

 

離婚後に財産分与で請求できるのは結婚している間の共有財産です。

そもそも、財産分与は結婚している間に購入した不動産や貯めた預貯金等の共有財産を対象に折半するものです。

例えば、離婚後に離婚相手が財産を取得したとしても、財産分与の対象とはなりません。

 

2.-(2)  財産分与の割合は原則として2分の1

 

財産分与の割合については、仕事に従事しているか、どちらが稼ぎの割合を多く占めていたかなどは基本的に関係がないと実務上取り扱われています。

つまり、専業主婦(夫)であっても、共有財産の半分を請求することができます。

 

財産分与は半分請求できる権利を持ちますが、以下のような場合はこの限りではありません。

  • 結婚前に財産分与の割合を決める夫婦財産契約を結んでいる場合
  • 相手方の特別な才覚で高収入を得たために財産を築いた場合

 

一方で、妻や夫に倹約するよう言いつけていたにも関わらず、相手が著しく浪費していた場合は請求できる財産分与の割合が多くなることもあります。

 

3.     離婚後に財産分与を請求する場合のリスク:財産隠しの危険とは?

離婚後も2年間は財産分与を請求できるなら、離婚を急いだ方が良いと思われるかもしれません。しかし、離婚後に財産分与を請求する場合は、財産隠しのリスクが大きくなります。

 

3.-(1)  離婚後は財産分与の対象となる共有財産を発見しにくい

 

夫婦共有の財産が明確ではない場合は、財産分与を請求した時に実際の財産よりも少なく申告される可能性がゼロではないため、注意しなければなりません。

財産分与を請求する際には、話し合いで折り合いをつけるにしろ、家庭裁判所に訴えるにしろ、財産を把握しておく必要があります。

 

離婚後は別居することになるためお互いの財産状況を把握できなくなります。別居期間を置いてから離婚する場合でも、別居する前に財産状況を把握することがポイントになります。

 

別居前ならお互いの生活を考えるために財産状況を聞いてもおかしくありません。しかし、離婚後に離婚相手の財産状況を聞いても回答は期待できません。

従って、離婚後に財産分与を請求するときは、財産を調査・発見することがとくに重要です。

 

3.-(2)  財産隠しが分からなければ損害賠償請求もできない

 

なお、前述の通り、離婚時に夫婦の共有財産がないと言われていたものの、離婚相手が財産を隠していた場合は財産分与以外に損害賠償請求ができる場合があります。

離婚後の財産分与は2年間の時効がありますが、財産隠しの損害賠償請求は離婚後の財産分与ができなくても請求できます。

 

しかし、財産隠しの危険なところは、そもそも財産があることが離婚後・別居後もずっと分からない可能性があることです。

財産隠しがされていること自体が分からないと、損害賠償請求はできません。

 

そのため、離婚後に財産分与を請求するときは対象となる夫婦の共有財産を調査するために弁護士に相談した方が良い場合が少なくありません。

 

4.     離婚後に財産分与対象となる夫婦の共有財産を調査するための方法

弁護士に依頼をすれば、離婚後でも財産分与の対象となる夫婦の共有財産を調査・発見できる可能性が高まります。

 

基本的に家庭裁判所が職権で財産調査をすることは期待できないので、財産分与を請求する側が夫婦共有の財産を明確にする必要があります。

財産分与対象財産の調査方法としては、弁護士照会制度と調査嘱託制度の2つがあります。

 

4.-(1)  財産分与の調査方法①:弁護士会照会

 

弁護士照会制度とは、財産分与の対象となる夫婦の共有財産について、弁護士会を通じて行う調査です。弁護士会照会は弁護士でないと利用できない権限です。

 

弁護士会照会は、弁護士に依頼をすれば離婚前後・別居前後・財産分与請求の前後を問わずに利用可能です。

法律上弁護士会照会は回答義務があるとされていますが、実務上はどの範囲で調査ができるかは事案によって様々です。

 

夫婦の共有財産を隠されたおそれがあるときは、どの程度まで情報を把握しているか等の事案によっても異なります。

あなたの事案において弁護士会照会でどこまで調査ができるかは離婚・財産分与に強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

4.-(2)  財産分与の調査方法②:調査嘱託制度

 

また、家庭裁判所に財産分与の申立てを行うことで調査嘱託制度を利用することもできます。

 

離婚後の財産分与においても、最初は調停を申立て、調停不成立の場合に審判に移行します。

実務上は、調停は夫婦の話し合いで解決するべきとして調査嘱託は消極的であるため、審判移行後に調査嘱託が活用される傾向にあります。

 

調査嘱託制度は財産分与と対象財産を調査する有力な手段です。

他方で、手当たり次第に調査嘱託をしても家庭裁判所は認めてくれません。開示を求める対象や必要性について調査嘱託の申立書できちんと説明することがポイントです。

 

4.-(3)  相手方が財産調査に協力しない場合

 

調査嘱託をしても嘱託を受けた先が相手方に同意を求める場合があります。もし、相手方が財産開示を同意しなければ調査が進みません。

離婚後の財産分与では、相手方が財産を隠し、財産調査にも全く協力をしないというリスクがあります。

 

このような場合は、財産調査に協力しないこと自体が1つの証拠になり得ます。

事案次第ではありますが、「相手方が財産調査に協力しないのは財産を隠しているからだ」と相手方に不利な事実認定を求めることも考えられます。

 

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5.     離婚後も2年間は財産分与ができるが財産が隠されるリスクに注意

誰もが円満に離婚できればよいですが、離婚を急ぐあまり離婚後に様々な請求をしなければならない場面もあります。

また、離婚時に取り決めをしても、離婚後に約束が破られることも少なくありません。例えば、子どもの親権が自分にある場合は、相手から支払われるはずの養育費が途中で未払いとなるケースもあります。

 

離婚時に財産分与を請求しなかったとしても、離婚後も財産分与を請求できます。しかし、財産分与の時効期限は離婚後2年間という期限があります。

もっとも、離婚時に財産を隠されていたような場合は、離婚後2年が経過して財産分与が請求できなくても、損害賠償を求めることができる場合があります。

 

とくに離婚時にあったはずの財産がないときは、離婚後に相手が財産を隠した場合もあります。離婚後は別居しており、財産状況も回答を得るのが難しくなります。

離婚後に財産分与や未払養育費等をきちんと請求することが、自分や子どもの将来の安定に繋がります。

 

離婚後はさまざまな問題に頭を抱えるものですが、財産分与もその一つだといえます。適正な財産分与を請求するためにも、財産の総額がわからないときは弁護士会照会や調査嘱託を利用することも考えられます。

離婚後に財産分与を請求したいときは、離婚・財産分与に強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

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