離婚の理由は、あなたが離婚したいと思ったときにポイントになります。
離婚したいときに考えるべき3つの視点と8つのポイントのうち、離婚の理由は「離婚することができるか」に関するものです。
(参考)【2019年保存版】離婚したいなら知るべき離婚・財産分与の全知識29項目
本記事では、どんな離婚の理由が多いかや離婚したい場合にどのような点が離婚理由になるかを分かりやすく解説します。
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業
Contents
1. 離婚の理由とは
「離婚 理由」で調べると5つの離婚理由について説明がされていることが多いですが、実は5つの離婚理由が問題となることは多くありません。
離婚をしたいのであれば、離婚の理由とはどういうものかの位置づけを押さえることがポイントです。
1.-(1) 夫婦がお互い離婚したいとき
まず夫婦がお互い離婚したいときは明確な離婚理由は必要ありません。
従って、法律で定められた5つの離婚理由は夫婦がお互いに離婚したいと思っているときは関係がありません。
1.-(2) 離婚の理由は裁判で離婚が認められる要件
離婚の理由は離婚するときに絶対に必要なものではなく、夫婦がお互いに離婚したいのであれば明確な離婚理由は必要ありません。
すなわり、離婚の理由は、あなたが離婚したいときに相手方配偶者が離婚を拒否しても、強制的に裁判で離婚するための要件です。
相手方配偶者が離婚を拒否していても強制的に離婚をするために必要なのが離婚の理由だという位置づけを理解することが重要です。
2. 法律で定められた5つの離婚理由
離婚したいとあなたが思っても話し合いによって離婚することができない場合に5つの離婚理由があるかが問題となります。
相手方配偶者が離婚を拒否したときは最終的に裁判手続で離婚することになります(裁判上の離婚、民法770条1項)。裁判上の離婚は、次の事由がある場合にのみ離婚することができます。
2.-(1) 離婚理由になる5つの離婚事由
民法770条1項は5つの離婚事由を掲げています。
- 不貞行為(不倫・浮気)
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
① 不貞行為
不貞行為とは要するに相手方配偶者が浮気や不倫をしたい場合に離婚できるということです。
② 悪意の遺棄
正当な理由なく、同居を拒んだり又は生活を保障してくれない場合には離婚することができます。
③ 3年以上の生死不明
相手方配偶者が3年以上の間生死が確認できない場合には離婚することが出来ます。なお、生死不明となるに至った原因は問われないと考えられています。
④ 回復の見込みのない強度の精神病
相手方配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合には離婚することができる可能性があります。
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由
夫婦関係が完全に破綻し、もはや夫婦として円満な関係を維持することができない場合は離婚することができます。
しかし、具体的な内容は定められていないため、個別的な事案において諸事情を考慮して、他の離婚事由に匹敵する程度の重大な事由があると判断された場合に離婚が認められます。
2.-(2) 重要な離婚理由①:不貞行為
離婚理由として一番分かりやすいのが不貞行為です。不貞行為とは要するに浮気や不倫のことですが、いくつか注意点もあります。
まず、不貞行為は正確には「自由な意思に基づいて配偶者以外の異性と肉体関係を持つ」とこと定義されます。従って、デートやキスでは不貞行為として離婚理由になりません。
また、例えば風俗等で1回遊んだだけの場合のように、不貞行為があったと思えても裁判所が諸事情を考慮して婚姻関係を継続させるべきと考えたときは離婚が認められないこともあります。
2.-(3) 重要な離婚理由②:長期間の別居
あなたが離婚したいのに相手方配偶者が離婚を拒否しているときは、長期間の別居を離婚理由とすることが最も有力です。
長期間の別居は、法律で定められた5つの離婚理由には挙がっていませんが、長期間の別居は⑤婚姻を継続し難い重大な事由に該当すると考えられています。
具体的には概ね5年程度を目安として別居を続けれていれば、裁判所は婚姻関係の継続は困難であるとして別居を認めるようです。
もっとも、あなたが有責配偶者であるときは、①さらに長期の別居、②未成年の子どもがいないこと、③離婚で相手方配偶者が苛酷な状況に置かれないことという要件が付け加わって初めて離婚が認められます。
2.-(4) その他の離婚理由の具体例
離婚理由として、法律上は「その他婚姻を継続し難い重大な事由」を定めています。
従って、幅広い離婚理由が裁判で認められます。簡単に裁判例でどのような離婚理由が認められているかを解説します。
① 性格の不一致
性格の不一致は離婚の動機として主張されることが多い離婚理由です。夫婦は生まれも育ちも異なるのが通常であるため、性格の不一致のみで離婚が認められるというよりは、様々な事情が考慮されて離婚理由となります(参考:東京地裁昭和59年10月17日判決)
② 暴力・モラハラ
相手方配偶者の暴力やモラハラが常軌を逸したものである場合は離婚理由となります。神戸地裁平成13年11月5日判決は、顔面を殴る、腕や髪を引っ張る等の暴行を加えた事案で離婚理由があると認めました。
③ 浪費・借金
浪費や借金も離婚理由となります。とくに相手方配偶者に隠れて借金をし、勝手に保証人にする又は破産に至ってしまう場合には離婚が認められやすいと言えます(参考:東京地裁平成15年7月4日判決)。
④ 性生活に関する問題
正当な理由がなく性交を拒否することは離婚理由になります。
例えば、夫がAVを見ての自慰行為で行わなくなった事案(福岡高裁平成5年3月18日判決)や、妻が9か月にわたって夫に触れられるのを気持ち悪いと言って性交渉を拒否した事案があります(岡山地裁津山支部平成3年3月29日判決)。
また、異常性癖の離婚理由としては、性交時に夫がふとんの上で靴を履かせる方法を強要し、かつ過度の性関係を強要した事案(浦和地裁昭和60年9月10日判決)において離婚が認められています。
⑤ 宗教活動
信教の自由が保障されているため信仰が違うことのみでは離婚理由とはなりません。しかし、例えば、大阪高裁平成2年12月14日判決のようには、妻が宗教活動にのめり込んで日常の家事や子どもの養育をしない場合には離婚理由として認められる場合があります。
⑥ 犯罪行為
新潟地裁昭和42年8月30日判決は、夫が詐欺罪で2回懲役刑になっており服役しているため、妻が働いて得たお金と父の援助によって何とか生活できているような事案において離婚を認めました。
3. (参考)どんな離婚理由が多いのか
ここまで説明したように離婚理由としては様々なものが該当し得ます。それでは、どのような離婚理由が多いのでしょうか。
裁判所が公表しているデータによれば、夫婦関係に関する事件のうち約61.5%が離婚の理由として性格の不一致を主張しているようです(平成29年度司法統計年報「3 家事編」第18表)。
性格の不一致は、裁判において必ずしも認められやすい離婚理由ではないですが、離婚調停を申立てる段階では主張しやすいものです。このような事情もあるでしょうが、離婚理由として最も多いのは「性格の不一致」であることは間違いないでしょう。
4. 離婚理由がないとしても心配する必要はない
離婚したいと思ったあなたが本記事を読んで離婚理由がない場合でも不安になる必要はありません。実務上は5つの離婚理由は重要ではなく、離婚理由は作り出せます。
従って、離婚理由がないとしても、あなたが離婚したいのであれば適切な対応をすれば離婚できるので心配ありません。
4.-(1) 実務上は5つの離婚事由が重要でない理由
しかし、法律に定められている5つの離婚事由は重要ではありません。
なぜなら、③3年以上の生死不明や④回復の見込みのない強度の精神病はなかなか生じることがありません。
また、①不貞行為や②悪意の遺棄に該当すると思える場合でも、実務上は離婚が妥当かや婚姻関係が破たんしているかの観点から離婚が制限されるときもあるからです。
他方で、離婚事由として、⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるため、婚姻関係が破たんしていると判断されれば離婚できるからです。
つまり、実務上は離婚理由のどれに当てはまるかではなく、諸々の事情を考慮して婚姻関係が破たんしているかが離婚できるかのポイントになります。
4.-(2) 離婚理由がなくても離婚できる
あなたが「離婚したいけど婚姻関係が破たんしているとまでは言えないのでは…」と不安に思われてもご安心ください。
離婚理由があればすぐに離婚できるだけであり、もし離婚理由がなくても、適切に対応すればいつかは離婚ができます。なぜなら、離婚理由は作り出すことができるからです。
離婚理由がないように思えるものの離婚したいと思うのであれば、離婚に強い弁護士に無料相談することをおすすめします。