離婚をするときは適正な財産分与を請求できるかは非常に重要な問題です。どのように財産分与をするかを夫婦の協議で決められないときは、調停手続によって財産分与を請求することになります。
財産分与の調停を考えている方から質問が多いのが、調停を有利に進めるためには弁護士に依頼するべきかという点です。
この記事では、財産分与の調停を有利に進めるためのポイントを解説した上で、弁護士に依頼するメリット・財産分与調停の弁護士費用を解説します。
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業
Contents
1. 財産分与調停を有利に進めるためのポイント
1.-(1) 調停委員を味方につける
財産分与を請求する調停手続では、あなたと相手方がそれぞれ調停委員に自分の要求を伝えて、どのように財産分与をするかを調停して貰います。
調停委員はあくまで中立的な立場ではあるものの、あなたの主張に説得力があると考えれば味方になってくれます。
感情論をぶつけるのではなく、分かりやすく自分の主張を論理的に伝えて、調停委員に共感して貰って味方になって貰うことが財産分与の調停を有利に進めるポイントです。
1.-(2) 財産分与の調停について仕組み・流れを理解する
調停手続で財産分与を請求するときは家庭裁判所に申立てを行い、概ね1か月から2か月に1回ずつ調停期日を経て進行します。
財産分与の方法について合意できれば調停成立となりますが、調停不成立の場合は訴訟・審判手続に移行します。
このような財産分与調停の仕組み・流れをきっちりと理解する必要があります。
とくに最初に提出する申立書はあなたの印象を大きく左右する重要な書類です。
また、調停は合意しなければ不成立になりますが、その後の訴訟・審判手続では裁判所の判断で財産分与の方法が決定されてしまいます。
このような仕組み・流れを理解していないと、最初から調停委員に悪印象を持たれたり、又は必要のない譲歩を迫られたりと損をする可能性があります。しっかりと財産分与の調停手続を理解しておく必要があるでしょう。
1.-(3) 財産分与がどのように決まるかを知る
どのように財産分与をするかが決まるかのポイントを押さえる必要があります。
まず財産分与の対象となる共有財産を明らかにすることが財産分与のスタートです。
財産分与の対象となるのは夫婦生活で築いた共有財産です。しかし、相手方が共有財産を隠しているケースもあります。このような場合は共有財産を調査する必要があります。
(参考)財産分与で弁護士会照会や調査嘱託を利用する方法:離婚時に財産隠しをされたときの有力手段
共有財産が分かったら、次はどのような割合で財産分与をするか決定します。
財産分与の割合は共有財産を築くのにどれだけ貢献したかが基準ですが、原則として2分の1ずつとされています。もっとも、例外的に2分の1ルールが修正される場合もあるので注意が必要です。
(参考)財産分与の割合:2分の1ルールの原則と例外を豊富な事例で解説
さらに、持ち家があるようなときは具体的にどのように財産を分けるかがポイントとなります。
現預金は半分ずつに分けられますが、持ち家は物理的に半分ずつに分けられません。また、住宅ローンが残っている等の問題があるときもあります。
持ち家を売却するのか、又はどちらかが住み続けるのか等の財産分与の方法を考える必要があります。
(参考)離婚時に持ち家があるときのポイント ケース別で分かりやすく解説
2. 財産分与の調停を弁護士に依頼するメリット
以上の通り財産分与調停を有利に進めるポイントはいくつかありますが、もしかすると自分で上手にできるか不安に思われるかもしれません。
調停手続は家庭裁判所に申立書のフォーマットがあり、比較的簡単に申立てをすることができます。また、調停委員を交えての話し合いという性質から、手続を進めること自体も自分ですることはできます。
しかし、調停委員に自分の意見を上手に伝えたり、自分に有利な主張をするとハードルが高いものです。
そのため調停段階から弁護士に依頼する方も少なくありません。ここでは、財産分与の調停を弁護士に依頼することでどのようなメリットがあるかを説明します。
約半分の人が調停段階から弁護士に依頼している
まず前提として調停を申し立てる段階でどのぐらいの人が弁護士に依頼しているのかを見ておきましょう。
実は、裁判所の統計データによると調停段階から弁護士に依頼している人は約51.7%と言われています(平成30年司法統計「家事事件編」)。
こちらは必ずしも財産分与に関する調停のみではなく、離婚調停・婚姻費用分担調停・財産分与請求調停等も含んでいますが、約半分の人が調停段階から弁護士に依頼していると考えて良いでしょう。
このように最近では調停段階から弁護士に依頼するメリットがあるという考え方が一般的になっているようです。
調停委員は弁護士の意見を尊重してくれる
弁護士がついているからと言って調停委員が味方になってくれる法律上の根拠はありません。しかし、実務的な感覚として、調停委員は弁護士の主張は比較的尊重してくれる傾向があると感じます。
実は調停委員は必ずしも法律の専門家ではありません。
調停手続はあくまで夫婦間の話し合いを仲介するものであり、お互いが納得すれば必ずしも法律・判例通りに財産分与をしなくても良いのです。そのため、ある意味では調停委員は法律・判例を知らなくても良いと言えます。
しかし、調停が不成立になった場合は法律・判例に基づいて裁判所がどのように財産分与を行うかを決定します。
そのため弁護士が法的根拠に基づいて主張をすると、調停委員も弁護士の意見を無視することは難しいのです。
財産分与の調停において調停委員を味方につけるという観点では弁護士に依頼することには大きなメリットがあります。
不利な条件で調停成立になることを防ぐ
調停が成立するためにはお互いの合意が必要であるため、自分に不利な条件であれば同意しなければ良いと思われるかもしれません。
しかし、財産分与の分け方には様々な考え方があります。また、一見すると相手が譲歩したように見えて実は不利な条件であることも少なくありません。
気が弱い人であれば、調停条項がよく分からないまま調停委員に説得されて同意してしまうケースもあります。
弁護士に依頼をしていれば、調停条項の意味をきちんと弁護士が説明をしてくれます。また、審判・訴訟の見通しを踏まえて調停条項に同意するかも決められます。
一見すると意味が分からない条項や不利な条項があれば、弁護士が代替案を提示して将来にトラブルが再発することを防止してくれます。
弁護士に依頼をすれば、よく分からないまま調停委員に説得されて不利な条件を押し付けられたという事態を防止できるメリットがあります。
審判・訴訟を見据えて主張・立証ができる
もし調停が不成立になった場合は審判・訴訟に移行します。審判・訴訟では裁判所に対して主張・立証を行って、最終的に裁判所が適切な財産分与を決定します。
逆に言うと、主張・立証を失敗すれば、あなたが納得できなくても裁判所によって財産分与のやり方が決められてしまいます。
調停段階では厳密な主張・立証は必要ありませんが、調停不成立に備えて審判・訴訟を意識した対応が必要となります。
例えば、審判・訴訟になったときに不利な事実や証拠を話してしまうと、調停委員を介して相手方に伝わって不利な状態で審判・訴訟をスタートさせるリスクがあります。
他方で、弁護士がついていれば、審判・訴訟で有利な財産分与を主張するための情報を引き出せることもあります。
不利な事実や証拠を明らかにすると取り返しがつきません。しかし、弁護士がついていれば審判・訴訟を見据えて主張・立証ができる点がメリットです。
時間や手間を省くことができる
財産分与の調停を有利に進めるためには調停手続や財産分与についての知識が不可欠です。さらに、申立書や期日においては適切な主張・立証をするための準備が必要です。
お仕事をしたり、家事・育児に追われながら、財産分与について調べ、申立書や証拠を作るのは非常に大変です。
弁護士に依頼をすれば調停手続・財産分与で分からないことは弁護士が教えてくれますし、申立書や準備も弁護士が行うため時間や手間を大幅に省くことができます。
また、調停期日は平日日中であり、相手方と同日に行われます。
どうしても仕事の都合で期日に行けなくなったときや、相手方と顔を合わせたくない等の場合は裁判所と調整をする必要があります。
財産分与の調停に手慣れた弁護士であれば、このような場合でもスムーズに対応してくれます。
財産分与の調停に要する時間や手間を省き、スムーズに手続を進めるためには弁護士に依頼することをおすすめします。
3. 調停段階から弁護士に依頼するべき5つのケース
財産分与の調停を弁護士に依頼するメリットを説明しましたが、以下のようなケースではとくに弁護士に依頼する必要性が高いと言えます。
3.-(1) 相手方が弁護士に依頼しているケース
もし相手方が弁護士に依頼しているのであれば、あなたも弁護士に依頼をしてサポートを受けた方が良いでしょう。
3.-(2) 調停委員が味方になってくれないケース
もし調停委員があなたの話を聞いてくれず、相手方の味方をしていると感じたら弁護士に依頼をした方が良いでしょう。
あなたの言い分がきちんと伝わっていない又は説得力がないと思われている可能性があります。まずは弁護士に相談をして、あなたの言い分に根拠があるかを確認しましょう。
3.-(3) 調停不成立が見込まれるケース
離婚・財産分与について話し合いができず、調停不成立の可能性が高い場合は早めに弁護士に依頼しましょう。
調停段階から弁護士に依頼しても、審判・訴訟から弁護士に依頼しても費用は同じことがほとんどです。調停不成立で審判・訴訟になって弁護士に依頼するのであれば、調停段階から弁護士に依頼しておく方が無難です。
3.-(4) 持ち家が財産分与の対象となるケース
財産分与が現預金のみである場合に比べて、持ち家が財産分与の対象になるケースは高額な財産分与であり、様々な持ち家の処分方法が考えられます。
複雑・高額な事案であるため弁護士に依頼をしてサポートを受けながら財産分与の調停を進めるべきでしょう。
3.-(5) 共有財産を隠されている可能性があるケース
財産分与の対象である共有財産が隠されているような場合は、どの程度の共有財産があるかを調査・立証する必要があります。
実は共有財産が他にもあったのに調停に同意すると大きな損をするリスクがあります。
このような場合は、共有財産がどれだけあるかを調査・立証するために弁護士に依頼をした方が良いでしょう。
4. 財産分与調停の弁護士費用
財産分与の調停を弁護士に依頼するときに気になるのが弁護士費用かと思います。ここでは弁護士費用の種類や弁護士費用相場について、どのような依頼をするか毎に説明します。
4.-(1) 弁護士費用の種類
弁護士費用は法律相談料、着手金、報酬金、日当に分かれます。
①法律相談料:初回無料のケースが多い
弁護士に財産分与の法律相談をするときに必要なのが相談料です。法律相談料は30分5000円程度が相場ですが、最近は離婚問題に力を入れている法律事務所では初回無料の事務所も多いです。
なお、私たちも初回の法律相談は無料でお受けしています。
②着手金
着手金は、弁護士に財産分与の調停を依頼するときに支払う弁護士費用です。どの程度の財産分与を請求するか、どのような手続を行うかによって変わります。
③報酬金(成功報酬)
報酬金は最終的に財産分与を請求する権利が認められたときに支払う弁護士費用です。どの程度の金額が認められるかに応じて報酬金は異なります。
④日当
日当は、調停期日に弁護士が出頭した場合に支払うお金です。概ね1~2か月に1回2時間ずつ家庭裁判所に行くためその弁護士費用が必要となります。
日当は家庭裁判所の距離にもよりますが、時間に関わらず調停期日1回あたり3~5万円程度とさだめられることが多いでしょう。
4.-(2) 財産分与調停の弁護士費用相談
調停で弁護士費用を請求するときの弁護士費用の相場としては、獲得した財産分与の金額によって以下の通りです。
財産分与の金額 | 弁護士費用(着手金・報酬金) |
300万円未満 | 20~24% |
300万円~3000万円 | 15~20% |
3000万円以上 | 10~15% |
もっとも、財産分与のみでなく離婚手続も依頼するかやどれだけ裁判所に行くかによっても弁護士費用が異なります。
4.-(3) ケース別で見る弁護士費用の具体例
以下では、財産分与の調停を弁護士に依頼したときに、どのような依頼方法かによるケース別でどの程度の弁護士費用になるか具体的に解説します。
なお、当事務所の弁護士費用の算定方法については以下のページをご覧ください。
(参考)離婚・財産分与の弁護士費用
① 300万円の財産分与請求のみを依頼したケース
着手金 | 報酬金 | 合計 |
24万円 | 48万円 | 72万円 |
② 離婚調停を依頼したところ1000万円の財産分与を獲得できたケース
着手金 | 報酬金 | 合計 |
30万円 | 130万円 | 約160万円 |
もっとも、事案の難易度や請求できる財産分与の金額見込みによって弁護士費用は異なります。また、ご事情によっては弁護士費用の分割払い等をお受けできることもあります。
初回の無料相談において、どの程度の財産分与を獲得できそうか、その場合の弁護士費用はいくらぐらいかをお見積りいたしますのでお気軽にお申し付けください。
5. 財産分与の調停を依頼に進めるためには弁護士に相談へ
夫婦間の話し合いで財産分与が決まらなかったときは調停を申し立てる必要があります。
財産分与の調停を有利に進めるためには財産分与や調停手続の知識が欠かせません。調停委員を味方につけるためには弁護士に依頼することも考えられます。
調停段階から弁護士に依頼する方も約半数程度はおられ、財産分与を請求するときに調停段階から弁護士に依頼するという考え方も一般的になってきたようです。
弁護士に依頼するときは、まず無料相談で弁護士費用の見積りを貰うことをおすすめします。離婚・財産分与問題に力を入れている法律事務所では、初回無料の法律相談を実施しているところも少なくありません。
どの程度の弁護士費用がかかるか、調停でどの程度の財産分与を獲得できそうかについてアドバイスを受けた上で弁護士に依頼するか否かご検討ください。
また、当事務所でも無料相談をお受けしております。法律相談・見積りは無料ですので、あまり悩まずお気軽にお問合せください。