離婚慰謝料の請求方法や慰謝料相場

離婚をするときに慰謝料が貰えると聞いたことがあるかもしれません。離婚とお金については、離婚慰謝料は大きな問題です。

離婚慰謝料は、離婚に至る原因を作った配偶者が精神的苦痛を被った配偶者に支払うものです。従って、離婚するときに慰謝料が必ず支払われるものではありません。

 

この記事では離婚慰謝料が生じるケースや請求方法について簡単に説明します。

(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

 

1.     離婚するときに慰謝料請求ができる場合

1.-(1)  離婚慰謝料とは

 

離婚慰謝料とは、離婚する原因を作り出した相手方配偶者に対して、離婚による精神的苦痛の損害賠償を求めるものです。

 

芸能人が離婚したニュース等で莫大な慰謝料を貰ったと聞いたことがあるかもしれません。そのため、離婚をすれば慰謝料として多額のお金を貰えると勘違いしている人もいます。

 

1.-(2)  慰謝料と財産分与の違い

 

しかし、離婚慰謝料は高額でも300万円程度に過ぎず、離婚をすれば必ず貰えるというわけではありません。

芸能人が離婚をしたときに大きなお金が動くのは財産分与であることがほとんどです。

離婚をしたときは財産があれば必ず財産分与をします。財産分与は離婚事案の約14.6%で1000万円超になり、多額のお金が動きます。

 

離婚とお金の問題については財産分与も重要なのでチェックしましょう。

(参考)【決定版】財産分与について知らないと損をする全知識21項目

 

1.-(3)  離婚慰謝料を請求できる場合

 

離婚慰謝料は離婚をすれば必ず請求できるわけではありません。

 

例えば、性格の不一致や生活のすれ違いによって、夫婦のどちらが悪いわけではないものの離婚に至ったときは原則として離婚慰謝料は請求できません。

なお、このような場合でも財産分与は請求できますのでご安心ください。

 

離婚慰謝料を請求できるのは、相手方配偶者が離婚の原因を作り出したと言える場合です。

例えば、相手方配偶者が不倫(不貞行為)をしたことが原因で離婚したようなときは離婚慰謝料を請求できます。

 

なお、相手方配偶者が不倫(不貞行為)をしたとしても、不倫(不貞行為)の時点で既に夫婦関係が破綻していたときは離婚慰謝料が認められないときもあるので注意が必要です。

相手方配偶者が不倫(不貞行為)をしていたことが分かり、離婚を考えているようなケースでは、あなたの事案で離婚慰謝料が認められるかは弁護士事務所にご相談されることをおすすめします。

 

2.     慰謝料を請求する相手方について

 

ここからは相手方配偶者が不倫(不貞行為)をしたため、離婚せざるを得なくなった事例における離婚慰謝料を念頭に説明します。

不倫(不貞行為)を理由とする慰謝料を請求するときは、慰謝料を請求する相手方を選ぶことができます。

 

2.-(1)  相手方配偶者に対する離婚慰謝料の請求

 

まず、不倫(不貞行為)をした相手方配偶者に対して離婚慰謝料を請求することが考えられます。

 

相手方配偶者は、あなたと結婚しているため貞操義務を負っています。従って、貞操義務を守って婚姻生活の平穏を保持する第一次的な義務を負っているのは相手方は配偶者です。

裁判例においても、「婚姻関係の平穏は第一次的には配偶者相互間の主そうぎう、協力義務によって維持されるべき」と指摘されています(東京高裁昭和60年11月20日判決)。

 

そのため、不倫(不貞行為)をした相手方配偶者に対して離婚慰謝料を請求することは自然なことです。

もっとも、離婚をするときに相手方配偶者には慰謝料だけでなく、財産分与も請求できます。

離婚のお金について、財産分与と離婚慰謝料は厳密に区することなく、話し合いによって合計金額をお支払するケースも少なくありません。

 

2.-(2)  不倫(不貞行為)の相手に対する不倫慰謝料の請求

 

不倫(不貞行為)は、相手方配偶者と不倫相手が共同して、あなたに精神的苦痛を与える行為です。

 

従って、不倫(不貞行為)の相手に対する不倫慰謝料を請求することも考えられます。

不倫相手は、夫婦関係の存在をしりながら不倫(不貞行為)をし、そのことで離婚(=夫婦関係を破壊)させたということで損害賠償責任を負うのです。

 

不倫(不貞行為)が原因で離婚をするケースでは、相手方配偶者と不倫相手の両方に慰謝料を請求することもできます。

慰謝料を二重取りすることはできませんが、相手方配偶者と不倫相手の両方に慰謝料を請求して、取れる方から取ることはできるのです。

 

他方で、不倫相手にだけ慰謝料を請求するケースもあります

不倫(不貞行為)が分かったものの、不倫相手と別れて家庭を大事にしてくれるなら夫婦関係をやり直そうと考えるようなケースでは、不倫相手にだけ慰謝料を請求することもあります。

 

3.     離婚に伴う慰謝料の相場

3.-(1)  慰謝料相場:50万円~300万円程度

 

離婚に伴う慰謝料の相場は、50万円~300万円程度です。

もっとも、慰謝料を請求する時点では300万円~500万円を請求し、相手方から減額交渉を受けて最終的な慰謝料の金額として50万円~300万円に落ち着くことが多いです。

 

離婚慰謝料の相場には大きな幅が存在しますが、各事案の個別具体的事情を踏まえて適切な交渉や主張立証を行えるか否かによって得られる慰謝料の金額は異なります。

 

3.-(2)  最初の請求金額は相場よりも高額であるべき

 

最初に請求する金額が慰謝料相場よりも高額なのは、最初から慰謝料相場通りの金額を請求すると減額交渉によってより低い金額しか貰えないからです。

 

交渉テクニックとしてアンカリング効果(=最初の提示金額が印象に残って意思決定に影響を及ぼす効果)があります。最初から低い金額を請求すると、それが交渉の上限金額となりますし、請求の相手方も低い金額でも納得できると思って強気で減額交渉をしてきます。

 

私たち独自の実務的な統計分析においても、最初に請求する慰謝料が多いほど、最終的に貰える慰謝料も高額になる傾向が明確にあると結論が出ています。

請求金額の時点では思い切って300万円から500万円程度の高額な請求をすることをおすすめします。

 

3.-(3)  慰謝料はどうやって決まるか?

 

離婚に伴う慰謝料の金額は、婚姻費用や養育費の場合と異なって、算定表のようなものは存在しません。そのため、様々な事情を自分に有利なように主張することが非常に重要となります。

 

慰謝料金額の算定根拠となる事情は、各事案毎に様々ですが、一応は以下のような事情が考慮されます。

  • 離婚に至った原因に対する責任の度合い
  • 結婚期間の長さ
  • 夫婦の年齢
  • 未成年の子どもの有無
  • 相手方の資力・社会的地位

 

例えば、結婚期間が十数年も続いてきたのに、夫が何度も浮気(不貞行為)を繰り返したためやむを得ず離婚した場合で、夫が平均を上回る収入を得ていたような場合には、慰謝料の金額は高めになる傾向があります。

 

3.-(4)  高額な慰謝料を請求するコツ

 

慰謝料の金額は、様々な事情を自己に有利なように主張して、相手方や裁判所に理解して貰う必要があります。

単に、離婚によって大きな精神的苦痛を受けたので高額な慰謝料が妥当であると言うだけでは説得力がありません。

 

また、慰謝料を請求すれば、相手方が弁護士をつけて減額交渉を試みてきます。

多少は減額に応じざるを得ないことがほとんどなので、最初は納得できる金額よりも高額な慰謝料を請求することをおすすめします。具体的には300万円から500万円程度の請求が一般的です。

 

どのような証拠を集めて、それに基づいてどのように主張すれば裁判所に事情を理解して貰えるかにはノウハウが必要となりますので、慰謝料の算定で損をしないためには、是非弁護士にご相談下さい。.

 

なお、離婚慰謝料の請求を大量に行う弁護士事務所では150万円~200万円程度の低額な慰謝料を請求することもあるようです。

低額な慰謝料を請求することで、相手方が弁護士に依頼することを防いだり、早期に相手方を納得させて支払わせる戦略だと思われます。

しかし、私たち独自の実務的な統計分析によれば、最終的に貰える慰謝料の金額は最初の請求金額に明確な影響を受けることが分かっています。

従って、私たちとしては低額な慰謝料を請求する戦略はおすすめできません。少なくとも300万円以上の慰謝料を請求することが効果的だと考えています。

 

4.     慰謝料を請求する方法

 

離婚に伴う慰謝料請求を行う具体的方法について解説いたします。

相手方配偶者に離婚慰謝料を請求するときと、不倫相手に不倫慰謝料を請求するときで請求方法が微妙に違うこともあるので念頭に置きながら考えてください。

 

4.-(1)  離婚協議の中での請求

 

相手方配偶者と同居しながら離婚の話し合いを進めているときは、離婚協議において慰謝料の話を出すことが考えられます。

 

話し合いで円満に離婚できるときは、明確に慰謝料や財産分与を区別する必要はありません。

夫婦の共有財産を分ける話し合いにおいて、不倫(不貞行為)を指摘して、多めに財産を貰うことで実質的に慰謝料を請求する方法もあります。

 

4.-(2)  内容証明郵便の送付

 

不倫相手に離婚で慰謝料を請求するときは、まず内容証明郵便を送付することで請求する方法が一般的です。

また、相手方配偶者と既に別居しているときや、直接話したくないときは、相手方配偶者に対して内容証明郵便で慰謝料を請求することもあります。

 

もっとも、不倫相手について電話番号、メールアドレスやLINE・SNSアカウント等が分かっているときは、電話やLINE等で慰謝料を請求することもあります。

 

4.-(3)  裁判によって慰謝料を請求する方法

 

話し合いや内容証明郵便の送付では慰謝料の支払いがなされないときは、裁判によって慰謝料を請求します。

 

不倫(不貞行為)を理由に離婚するので慰謝料は欲しいけれど、裁判はしたくないと考える方も少なくありません。

弁護士に依頼すると裁判を起こして慰謝料を請求することになるのではと不安に思う方もいるようです。

しかし、私たちの実務的な統計情報では、不倫慰謝料事案のうち約86%の事案が裁判にならずに解決できています。必ずしも、弁護士に依頼しても裁判になるわけではないのでご安心ください。

 

5.     慰謝料を請求する場合の期限について

慰謝料請求を行う場合には、請求期間について注意が必要です。すなわち、慰謝料の請求は、原則として3年間の経過によって時効によって消滅します(民法724条前段)。

なお、離婚後の財産分与については、離婚後2年間が請求期限とされています。

 

請求の準備を考えると、あっという間に請求期限を迎えることがあります。離婚をした時に慰謝料や財産分与を請求していないときは、早めに離婚・財産分与に強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

5.-(1)  浮気相手の名前や住所が分からない場合

 

不倫行為があったことを知ってから3年以上経過しているが、浮気相手の身元が分からなかった場合は慰謝料請求を行える場合があります。

判例では、名前や住所が不明であるため慰謝料請求が事実上不可能な場合には、相手方の名前や住所を確認した時点が加害者を知った時にあると考えられています(最高裁昭和48年11月16日判決)。

 

5.-(2)  不倫開始から3年以上は経過したが、その間不倫が継続している場合

 

例えば、夫が浮気相手と同棲するために家を出て行き、3年間以上も同棲生活が続いているような場合です。

このような場合に関して、最高裁は、同棲関係を知っていた時点から時効が開始するため3年以上前の期間に関しての慰謝料請求権は一部消滅したと判断しています(最高裁平成6年1月20日判決)。

 

しかし、現実的には不倫関係が終了してから3年間を経過するまでは一部については慰謝料請求が出来るため、不倫関係が3年以上継続している場合でも慰謝料を請求できる可能性があります。

 

5.-(3)  不倫が継続した後に離婚した場合

 

例えば、夫が浮気相手と同棲を3年以上した後に離婚した場合です。

 

このような場合に関しては、同棲開始時点から時効が成立するとした上で、慰謝料請求から3年前の時点で婚姻関係が破綻している場合には慰謝料請求が認められないとする考え方もあります。

しかし、裁判例では、不貞行為を原因として離婚に至った場合は精神的苦痛は離婚成立時に初めて評価されるため、離婚成立時から3年間が経過しないと慰謝料請求は時効消滅しないとされています(東京高裁平成10年12月21日判決)。

 

他方で、最高裁平成31年2月19日判決は、不倫相手に対して離婚慰謝料を請求できるのは特段の事情があるときに限定しています。

この判決は解釈の余地が色々とありますが、不倫相手に対する慰謝料請求は、原則として不倫終了から3年が時効期限と考えられます。

 

5.-(3)  相手方配偶者に対する慰謝料請求

 

配偶者に対する慰謝料請求は、離婚自体についての慰謝料請求と個別的な行為(不倫、不貞行為)に対する慰謝料請求が理論上は考えられます。しかし、実務的には、両方が明確に区別されることは稀です。

 

そして、個別的な行為(不倫、不貞行為)に対する慰謝料請求権は、夫婦の一方が他方に対して有する権利であるため離婚から6か月を経過するまでは時効消滅しないと考えられます(民法159条)。

また、離婚自体についての慰謝料請求は当然ながら離婚時までは時効期間は進行しません。

 

実務的には離婚から3年以内であれば相手方配偶者に対して離婚慰謝料を請求することができ、慰謝料を算定する考慮要素として個別的な行為(不倫、不貞行為)に関する事情が考慮されています。

従って、原則としては、離婚後3年間を経過するまでは相手方配偶者に対する慰謝料請求を行うことが出来ると考えられます。

 

以上のとおり慰謝料請求の期間を考えることができますが、いつ損害と加害者を知ったかを立証することは難しいです。

また、不倫(不貞行為)を知ったものの離婚を決意することができずに悩んでいる間に時間が経過することがあります。

不倫(不貞行為)を知って離婚に悩んでいるときは離婚・財産分与に強い弁護士に早めに相談することをおすすめします。

 

6.     不倫が原因で離婚するときは慰謝料を請求しよう

離婚慰謝料は必ず請求できるわけではありません。離婚とお金の問題では財産分与の方が大きなお金が動きます。

しかし、不倫が原因で離婚をするときは慰謝料を請求することができます。

 

慰謝料相場は50万円から300万円程度ですが、最初は300万円から500万円程度の高額な慰謝料を請求することをおすすめします。

私たちの独自の実務的な統計分析において、最初の請求金額が高額であれば最終的に貰える慰謝料の金額も多くなることが分かっているからです。

 

慰謝料を請求する場合には時効期限があるので注意が必要です。

また、弁護士に依頼すると裁判になるのではと不安に思われるかもしれません。しかし、私たちの統計では約86%の事案において不倫慰謝料問題は裁判にならずに解決できています。

 

不倫(不貞行為)が分かって離婚を考えたときは、早めに離婚・財産分与に強い弁護士に相談することをおすすめします。